KOLLAMAT® PICK UP
次世代のサステナブルマテリアルとして注目される「KOLLAMAT®」は、皮革端材を活用した高級感と機能性を併せ持つ新素材です。そのユニークな質感とストーリー性に魅力を感じ、積極的な提案を進めているのが、シーレックス株式会社・坂口和重氏です。
今回は、KOLLAMAT®との出会いや市場における可能性、そして今後の展開についてお話を伺いました。
「これは一体、何なんだろう」から始まった素材への関心
─KOLLAMAT®に初めて触れた時の印象を教えてください。
展示会に参加した社内メンバーが持ち帰ったサンプルを見て、「これは何だろう?」というのが第一印象でした。樹脂なのか、ゴムなのか、合皮なのか──一見して正体がわからない。でもその曖昧さが、逆に非常に興味をそそられました。
今までいくつかのサステナブル素材には触れてきましたが、KOLLAMAT®には他とは違う“特別なインスピレーション”を感じました。質感も独特で、どこか本革のような重みと深みを感じさせてくれる素材だと思います。
提案者の視点で見るKOLLAMAT®という“新しいカテゴリー”
─デザイナーへ提案する立場から、KOLLAMAT®の強みはどこにあると感じていますか?
私たちのグループは、主に家電メーカーのデザイナーに対して意匠部材を提案しています。家電の中でも近頃は美容家電との関わりが深く、なかでもメンズ向けのシェーバーなど手に持って使用する家電にKOLLAMAT®は、非常にフィットすると感じています。
また、私の担当ではありませんが、シーレックスは化粧品メーカーさんや文房具メーカーさんとも多くの取引があります。KOLLAMAT®は革由来の質感が魅力ですので、 “手に触れるモノ”であり高級感が喜ばれるそのようなジャンルでもマッチすると思います。
実際に提案してみると、「革っぽい」「グリップ感がある」「ストーリーに惹かれる」といった反応が返ってきます。とくに“本革好き”のデザイナーには、革製品の端材をアップサイクルするという素材のストーリーにも強く共感していただけるようです。
サステナブルな素材を使いたいというニーズはますます強まっています。
これまで大手家電メーカーへさまざまな加飾や加工のアイデアを紹介してきましたが、近頃は環境に配慮された素材や環境に配慮された作り方の提案であることが必須となりつつあります。これは単にデザイナーの興味関心というだけでなく、会社としてそのような方針が取られているからです。

ただ今までの経験上、例えばプラスチックでやったことをこれに置き換えましょうという話になってしまうと、必ずコストや、強度の信頼性など性能上の課題が壁となって、採用のハードルが高くなってしまいます。サステナブル素材が採用から遠ざかってしまう一番の理由はここだと思います。
だからこそ、KOLLAMAT®はプラスチックでもゴムでもない”新しいカテゴリーの素材”として理解を得ていくことが、採用いただく一番の近道だと考えています。
KOLLAMATをより多くの人へ届けるために──試作を通じて見えた可能性
─先日、松井製作所のテックスタジオでの試作をされましたが、どのような発見がありましたか?
今回かなりわがままを言って、難しい形状の試作をやっていただきましたが、松井製作所さんのオペレーターや、技術スタッフの対応の良さには非常に感動しました。
「形にしよう」という熱意が伝わってきたのですごくありがたかったです。普通の成形メーカーさんでは、忙しさやリスクもあって、ここまでの対応はなかなか期待できないと思います。
私たちが試作で見たかったのは、お客様から最も聞かれやすい「どこまで複雑な形状が再現できるのか」「どこまで薄くできるのか」といった点です。今回、試作品ができたことでより具体的に伝えられるようになりました。これからも研究を重ねて、どこまでのことができるのか、逆に何ができないのかを明確に説明できるようにしていきたいです。そこがクリアになれば、条件に合わせた商品づくり・採用検討がしてもらえるようになるはずです。
松井製作所さんのテックスタジオは、設備が整っていて清潔感もあり、非常に気持ちのよい試作体験ができました。対応の柔軟さや、技術者の熱意も含めて、今後の素材提案のパートナーとして大きな信頼を寄せています。

─今後KOLLAMAT®を広めていくために必要な工夫は?
やはり、“製品の形”に近い試作品を見せることが重要だと思います。サンプルシートだけではイメージが湧かないという声は多いです。実際の製品にあわせたサイズや形状で見せることで検討されやすくなります。
金型の制作には多額の費用もかかりますし、試作には大きな成形機も必要です。今後、3Dプリンターなどを活用した簡易成形の仕組みがあれば、提案の幅も広がるでしょう。
今できることとしては、形になっているものに触れていただくこと。グリップ型サンプルを複数入手しましたので、今後は興味を持ってくださったお客様にお渡しして、そこからのフィードバックを吸い上げながら、さらに採用可能性を広げていきたいですね。
“新しい素材には、新しい語り方が必要”──導入を検討されている方へ
─導入を検討している企業・デザイナーの方へメッセージをお願いします。
KOLLAMAT®は、単なる成形素材ではなく、“語れる背景”と“触れて感じる価値”を持った素材です。今の時代、製品に物語が求められている中で、この素材は非常に大きな可能性を秘めていると思います。
製品本体への導入が難しければ、アクセサリーパーツから始めてみるのも手です。
たとえば、プロ用のバリカンのグリップに使うのが難しければ、替刃を収納するスタンドや、パッケージに取り入れてみるといった具合です。

また、シーレックスでは木材系のサステナブル素材など、他の自然素材も取り扱っています。これらとKOLLAMAT®を組み合わせることにも取り組みたいです。木と革、どちらも人に温かみを感じさせる素材ですし、KOLLAMAT®の世界観と調和する可能性を感じています。
シーレックス株式会社
1935年創業の印刷加工メーカー。シール・ラベルの設計から印刷、加工、製造までを一貫して手がける技術力を強みに、長年にわたり多様な業界の製品づくりを支えてきました。近年では、家電や化粧品などの加飾部材、RFIDソリューション、ラベリング機器などにも領域を広げ、意匠性と機能性を兼ね備えたモノづくりを通じて、新たな価値の創出に挑戦しています。
公式サイト:https://www.sealex.com/
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