KOLLAMAT® PICK UP

KOLLAMAT®との出会いが、ものづくりの想像力を刺激した

株式会社富士精工 代表取締役社長 横山賢司 氏

2025年5月28日 更新

KOLLAMAT®との出会いが、ものづくりの想像力を刺激した

株式会社富士精工 代表取締役社長 横山賢司 氏
2025年5月28日 更新

次世代のサステナブルマテリアルとして注目される「KOLLAMAT®」は、皮革端材を活用した高級感と機能性を併せ持つ新素材です。その成形テストに協力されたのが、精密成形技術に定評のある株式会社富士精工。今回は代表取締役社長の横山賢司氏に、KOLLAMAT®との出会いや成形時の工夫、そして富士精工としての展望についてお話を伺いました。

樹脂なのに“革”? 驚きから始まった出会い

─KOLLAMAT®を初めて見たときの印象を教えてください。

最初に見たときは、「なんだこれは」という驚きがありました。本物の革を混ぜ込んだ樹脂というのは初めてでした。特に印象的だったのは「香り」です。触れた瞬間に、革独特の匂いがしっかりと感じられたことは、これまでの素材にはない体験でした。

五感に訴える素材──久々に出会った“刺激”

─KOLLAMAT®の優れていると感じた点はどこですか?

やはり人間の感覚に直接訴えかけるところですね。香り、肌触り、見た目──感性に響くポイントが多い素材だと思います。私自身、触れてみて非常に刺激を受け、「これは面白そうだ」と直感的に感じました。実際、素材を紹介してくださった松井製作所の担当の松下さんにも、即答で「ぜひテストしましょう」とお返事しました。

この業界では、素材の革新はそう頻繁に起きるものではありません。ある意味で“技術的に飽和状態”といえる中で、KOLLAMAT®のような新しい素材に出会えたのはとても貴重なことでした。

スムーズな試作の裏に、プロフェッショナルの連携と技術がある

─実際に成形してみた印象や難しさなどがあれば教えてください。

正直なところ、最初は「本当に成形できるのだろうか」と不安がありました。情報も少なく、扱いが難しそうな印象を持っていました。ただ今回は、松井製作所さんが先行して研究を進められており、その知見を共有いただけたことで、非常にスムーズに条件設定を行うことができました。

当社・富士精工では、これまでに多様な成形実績を重ねてきました。その中でも金型を高温に加熱してから樹脂を流し込み、成形後に急冷する「ヒート&クール成形」には自信があります。この技法を用いることで、金型表面の模様や質感がより美しく、深く転写され、艶感のある仕上がりが得られるため、KOLLAMAT®のように高級感や意匠性を重視する製品には非常に効果的です。

今回は100mm角の型押しパネルやA3サイズの革模様入りパネルなどを製作しましたが、表面の艶、型押しの仕上がりの美しさなどに高い手応えを感じました。

KOLLAMAT®の試作例 艶やかな質感の右側がヒート&クール成形を用いたもの

デザイン性の高い製品にこそ活きる可能性

─試作を通して、どのような製品展開が見えてきましたか?

KOLLAMAT®は機能部品というよりも、デザイン性の高い部品・製品に向いている素材だと感じました。革のような風合いや香りを活かせるのは、インテリアパネルや雑貨、車の内装、さらには家電の外装など、生活の中で感性に訴える製品です。 成形性も意外なほど良く、条件の調整もしやすい。これは実際にやってみて「いろんなものに使えるぞ」と手応えを感じたポイントです。まだ試作段階ではありますが、デザイナーさんのアイデア次第で多彩な展開が見込める素材だと思います。

“まずは触ってみて”──アイデアを形にするお手伝い

─KOLLAMAT®の今後の展開に期待すること、また読者へのメッセージをお願いします。

とにかく、実際に手に取って、触って、香りを確かめてみてほしい。それが一番この素材の魅力を伝えられる方法だと思います。

松井製作所さんでは、小さなアイデア段階の試作から量産に向けた支援まで、幅広く柔軟に対応をされています。「こういうこと、できるかな?」といったざっくりとしたご相談でも構いませんので、気軽にお声がけいただければと思います。

お客様が自社の現状生産ラインに使っている成形機で、新しい素材の試作をすることにはリスクが伴います。KOLLAMAT®の繊維が機械の中に残ってしまうと。本生産した時に不良につながるとか。そのため、デザイナーさんのやりたい試作を現場でやらせてもらえないということが発生します。他社に依頼するとしても、新しいコンパウンドというのは、試作を受けてもらえる企業さんを探すのが大変です。

松井製作所と富士精工の連携によって、企業様が自社設備で試作する際に感じる「不安」や「リスク」を大きく軽減できる点も大きな価値です。とくに当社では小型部品から大型パネルまで幅広く対応できる設備を備え、外部試作の受け皿として安心してご相談いただけます。

富士精工にて製作された試作例 型押しの表現が美しい

また、金型メーカとしての知見で、樹脂の転写性、流動性を上げるにはどうしたらいいか、2色成形するにはどうしたらいいかとなど、正規品の生産までに発生する様々な課題に対して一緒に取り組み、製品を企画される方々に伴奏したいと考えています。

KOLLAMAT®という新しい素材に、ぜひ多くの方にチャレンジしていただきたいですね。当社もそのお手伝いができることを楽しみにしています。

株式会社富士精工 
精密金型の設計・製作を中心に、成形加工や試作支援も手がける金型メーカー。ヒート&クールなど高度な成形技術に対応し、意匠性の高い製品開発にも柔軟に対応できる体制を強みとしています。
公式サイト:https://www.fuji-gr.co.jp/

KOLLAMAT®の可能性をその手で確かめてください